職種変更、転勤が企業内の人材活用方式だとすれば、出向、転籍は企業グループ内の人材活用方式だといえます。
つまり、企業のグループ化にともなって企業内労働市場が中間労働市場へと移行したために、企業内の人材活用方式である職種変更、転勤にかわって、企業グループ内の人材活用方式として出向、転籍という手法が確立されたといえます。
同時にこれは、一社ではなく企業グループ全体で労働者の雇用を確保するという目的ももっています。
「出向」とは、労働者が自己の雇用先の企業に在籍したまま、他の企業の事業所で相当期間にわたって当該他企業の業務に従事することをいうとされています。
ただし、出向は、労働契約を締結した当事者以外の使用者のもとで働くことになりますので、労働契約には含まれておらず、当該労働契約締結時に労働者の同意が必要になります。
そこで、先ほど説明した時間外労働と同様に、就業規則に「業務上の必要性により他社に出向を命じることがある」と規定し、入社時に労働者の同意(包括的同意)を得ておく必要があるのです。
また、この包括的同意が労働者の真意と評価される必要があり、親会社と子会社・関連会社の関係であれば、ある程度出向先が予測できれば足りるとされますが、下請け企業など資本関係のない会社の場合は、出向先、出向先での労働条件、三年ないし五年の出向期間が規定されている必要があるといえます。
「転籍」とは、労働者が自己の雇用先の企業から他の企業へ籍を移して当該他企業の業務に従事することをいうとされています。
転籍は出向と違って包括的同意では足りず、転籍時に具体的労働条件・雇用管理自体の変動(就業規則の合理的変更)正社員は、一般的に期間の定めのない労働契約を締結しています。
ですから、前述のとおり、契約の自由の原則からすると、いつでもその労働契約を解消することができます。
一方、労働契約の内容となる労働条件は、契約の当事者間の合意により決定されたものですから、一方の当事者の意思だけでは変更することができないのが原則です。
ところが、長期雇用システムという雇用慣行による雇用が尊重され、判例も解雇権濫用の法理を確立しているため、実務上は労働契約の解消が不自由になっています。
そのため使用者は、特別の事情がないかぎり労働者の雇用を強いられることになり、二○年から三○年、長ければ四○年を超える労働契約も出てきます。
それに対して経営環境は、時代の変遷とともに大きく変わっていきます。
昭和三○年代から四な同意(個別的同意)が必要といわれています。
しかし、企業グループにおける人材活用や雇用の保障という面から考えれば、転籍も使用者にとっては必要不可欠な人事施策となりつつあり、入社時に転籍先(企業グループ内の企業に限定する)、転籍先における労働条件(労働時間・休憩・休日・休暇)を明示して労働者の同意(包括的同意)を得れば命令も可能と考えるべきだと思います。
これからは、〃転籍の時代″になる可能性を秘めています。
五○年代前半の高度経済成長、昭和四八年のオイルショック、昭和五二年からの円高、そして熱ハブルの到来と崩壊という社会経済の動きを見ただけでも一目瞭然といえます。
契約の本来の姿からいえば、このような経営環境の変化に対しては労働契約の解消、すなわち雇用の調整という方法で使用者は対応するはずでしたが、解雇権濫用の法理が特別の事情がないかぎりそれを許さないために、経営手法は著しく硬直化せざるを得なくなりました。
そこで判例は、経営環境の変動に応じた柔軟な経営を認める必要から、契約の本来の姿からいえば相手の同意がなければ変更することができない契約内容、とくに労働条件などについても、就業規則の規定の変更内容が「合理性」を有することを条件に、使用者に一方的な変更権を認めることにしました。
これが、労働条件の「不利益変更の法理」といわれるものです。
ただし、この原則は、その企業や事業場で働く大多数の労働者がその変更に同意しているにもかかわらず、一部の少数労働者が反対している場合、その変更の拘束力を認めようという法理であることに注意する必要があります。
そして、この規定の「合理性」の判断基準は、変更の業務上の必要性、変更の内容(不利益の程度・内容)を比較検討し、その検討の際、については、関連労働条件改善の有無内容を十分に斜酌して、変更の社会的相当性や労働組合との交渉経過、他の大多数の労働者の態度を総合的に勘案していくことになります。
このように、正社員の雇用をできるだけ守るということを雇用慣行として維持していくので正社員は、長期雇用システムという雇用慣行と、それを支える判例の解雇権濫用の法理によって雇用が保障されています。
そのためレイオフ制度があるアメリカなどと違って、日本の場合は会社の経営上の都合では簡単に労働契約を解消することができないといわなければなりません。
現在、判例は会社経営上の都合による労働契約解消、すなわち整理解雇について次のような四つの要件を個別に使用者に要求しているといえますが総合的判断とする裁判例も近時見られます。
客観的に社員をやめさせなければならないような経営上の都合があるか会社の経営上の都合があるとしても、社員をやめさせない方向で経営の立直しができないのか、また実際にそのような努力を行ったかどうか対象者を選ぶ基準は、合理的であるか、実際に選ぶ手続きに妥当性があったかどうかその労働契約解消を実施するときに労働組合などと誠意をもって話し合ったか、あるいは社員に誠意をもって十分説明したかどうかは、今日の低経済成長時代に応じた労働条件、雇用管理の設定のための不利益変更が実務上、実施されていくことになると考えられます。
正社員の整理解一展の必要性右で説明した四つの要件のうち、の「業務上の必要性」については、いろいろな立場から議論がされていますが、原則として最近のリストラでみられる減益傾向、企業体質の強化というような理由では、その必要性は否定されることになると思います。
しかし、現実に企業が倒産するという事態になれば、労働者も職場を失い、家族を含めて過酷な生活状況に追い込まれるわけですから、労働者を整理解雇しなければ倒産してしまうというような状況を要求するのは、非現実的だと考えなければなりません。
また、帳簿上は黒字でも、資金がスムーズに回転していなければ倒産する可能性がありますし、逆に赤字でも銀行が融資してくれるかぎり企業は生き残っていけます。
そこで、従来の第二次産業のように、土地、建物という資産を有する会社の場合には、営業利益がここ二、三年赤字で、現状のままでは今後数年赤字になることが予測され、労働者をやめさせる以外に収支を改善させる方法がないこのような経営内容が続くと、銀行からの融資がストップされるなどの問題が発生する可能性があるというような状況を一つの目安にすればよいと考えます。
正社員の解雇基準右の整理解雇要件が満たされた場合でも、使用者は自由に被解雇者を選定できるわけ次に、要員不足を補うために実施されている恒常残業を中止するとともに、新規採用や中途採用を抑制して、現在の人員をできるだけ守る努力が必要です。
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